1 就学援助における入学準備金の前倒し支給について
小学1年生でも入学準備金の前倒し支給を
【高橋議員】通告に従い、順次質問します。はじめに、就学援助の入学準備金前倒し支給について質問します。
今定例会では、新中学1年生への就学援助の入学準備金を、入学前に前倒しして支給するために、1億700万円余の補正予算案が提出されました。就学援助は、経済的理由によって、就学困難と認められる児童生徒の保護者に対して行われる援助制度であり、子どもの貧困対策としても重要な施策です。本市の就学援助を受ける児童生徒は、小学生が12.8%、中学生が16.3%と、子どもが成長するほどに、生活が厳しくなる傾向が見えてきます。そのため、制服や学用品など、入学に向けて様々なものが必要な時期に、入学準備金が支払われることは、中学校に入学する子どもを持つ保護者のみなさんから切実な願いでした。入学準備金の前倒し支給を求め続けてきた我が会派としても、今回の中学生への入学準備金前倒し支給の提案は、非常に意義のある提案であり、心より歓迎いたします。
ところで、就学援助の入学準備金が支給されるのは、中学生だけではありません。新小学1年生にも支給されます。小学生であっても、ランドセルや学用品の購入など、まとまった出費が必要であり、やはり入学前に支給してほしいという保護者の声はたくさん聞こえてきます。
他の政令市での新小学1年生への就学援助入学準備金前倒し支給状況について、調べてみたところ、福岡市、北九州市、熊本市がすでに新小学1年生へ前倒し支給を実施しており、来年度入学生からは京都市、神戸市が新たに実施。広島市、横浜市でも実施に向けた検討が行われています。もちろん前倒し支給をするためには課題もあるかと思います。本年3月の我が会派の代表質問でも、教育長は「他都市の動向を注視しつつ、引き続き課題を整理する必要がある」と答えています。今回、新中学一年生への前倒し支給を実施することとしたということは、一定課題の整理が出来たからだということですよね。
教育長、今回、新中学1年生の就学援助の入学準備金前倒し支給をするにあたって、どのような課題があって、どう解決されたのか。また、新小学1年生への前倒し支給を実施するためには、どのような課題があると考えていますか。早急に課題の解決をはかり、小学校でも入学準備金の前倒し支給を実施すべきではありませんか。答弁を求めます。
未就学段階での受付体制などの課題を解決できるよう検討する(教育長)
【教育長】新中学1年生に対する入学準備金を入学前に支給するにあたっては、支給後に市外転出された場合に返還を求めるかどうか、あるいは、支給後に市内へ転入された場合に支給するかどうかといった課題がありました。
具体的には、支給後に市外転出された場合についても、中学校に進学することには変わりはないことから、返還は求めないことといたしました。また、支給後に市内へ転入された場合には、原則として、入学後に支給いたします。
新小学1年生への支給時期については、未就学段階での受付体制など課題がありますが、 新中学1年生に対する支給の状況などを十分考慮し、入学前に支給することができるよう、検討を行ってまいります。
実現した他都市では入学届を提出した小学校へ申請書を持参
【高橋議員】今回の新中学1年生への入学準備金前倒し支給については、市外へ転出する場合であっても必要なのだからという視点に立ち、経済的に困っている方のことを考えた対応をされるものだと感じます。そして新小学1年生への前倒し支給について、受付体制など課題があるということでしたが、他都市で実施しているところに受付体制について話を聞いたところ、入学届を提出した小学校へ、就学援助の申請書を持参するということで、そのこと自体に大きな課題はないとのことです。1年前の11月定例会でも岡田議員の質問に対して「受付体制を確立する必要がある」との認識を示してきましたよね。いつまで課題解決を検討し続けるつもりなのでしょうか。これまでのやり取りからも、中学生への前倒し支給と一緒にやれたんじゃないかということを強く感じます。もう課題を先送りにするのではなく、新小学1年生への入学準備金前倒し支給をできるだけ早く、実施していただきますよう強く要望しておきます。
2 学校現場における本務教員の欠員解消に向けた取り組みについて
毎年100名前後の正規教員が不足
【高橋議員】次に、学校現場における本務教員の欠員解消について質問します。
本市の本務教員、いわゆる正規教員の欠員状況はどのようになっているでしょうか。これまで毎年、100名前後の正規教員不足があるという状況が続いていました。これまでは本市の実情を踏まえた教職員定数案を作成し、それを愛知県に要望。その要望に基づいて県教育委員会の中で県内全体の教職員定数案を作成し国へ申請。国はそれを基に愛知県の教職員定数を決定して県に連絡、その定数を愛知県が配分し、本市の教職員定数が決定されていました。その結果、必要な教員が足りずに、臨時教員を任用して穴埋めをしてきたわけです。
しかし本年4月に権限移譲が行われ、これまでの県との関係による制約もなくなり、名古屋市の実情に応じた教員数について、国に対して直接申請をすることができるようになりました。となれば、正規教員不足をなくしていくことができるのではありませんか。
そもそも教員は、教育基本法第9条2項において「・・・その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられる」こととされています。なぜか。それは、子どもたちの成長・発達を見守る教員が、臨時という不安定な身分では、中長期的な視点で行われるべき教育活動が保証しきれないと考えているからこそ、身分の保証がされているのです。
その視点に立ってみたときに、本市の状況がどうなのか、改めて考えてみると、毎年正規教員が欠員状態となっており、その穴埋めを臨時教員に頼らざるを得ない状況が続いているというのは、異常な状態だと言わざるを得ません。
そこで教育長にお尋ねします。本市の正規教員不足についての現状認識と、今後、具体的にどのようにして解消していくおつもりですか、お答えください。
欠員数はできるだけ減らしたい(教育長)
【教育長】本務教員の欠員は、当初想定した学級数や国からの定数改善による加配数の見込みにずれがあることにより発生します。その他、採用試験後の希望退職者数や新規採用予定者の辞退数なども影響してきます。
今年度は、権限移譲に伴う国の定数改善が行われたこともあり、本年度当初の欠員数は、小学校55名、中学校65名、特別支援学校・特別支援学級63名、計183名となっています。
今後は、権限移譲により、国に対して愛知県を介さずに直接教職員定数の要望ができるようになったメリットを生かしながら、次年度の学級数や加配数の見込みなどを精査し、欠員数をできるだけ減らしてまいりたいと考えます。
今年度は例年より大幅増の183名の欠員。想定できなかったのか
【高橋議員】欠員は、今年は国の定数改善が行われたこともあり、本年度当初の欠員が183名となったということで、例年より大幅に増えています。教育長、県を介さずに直接国へ教職員定数の要望ができるようになったメリットを活かしていくとしながら、権限移譲後初の年である今年度、これだけの欠員を生じさせたことについて、国からの定数改善などを想定することができなかったのですか。
権限移譲初年度で国の定数措置を正確に見込むことが困難だった(教育長)
【教育長】教員採用数は例年9月に決定しておりますが、国から定数が内示させるのは、翌年の2月であることに加え、今年度は権限移譲初年度であり、国の定数措置を正確に見込むことが困難であったためです。今後とも欠員数を出来るだけ減らすよう、次年度の学級数や加配数の見込みなどを精査していきたい。
市で長期間働き続けている臨時教員は正規採用を
【高橋議員】今年度は、国との直接のやり取りがはじめてであったため、想定することが難しかったとのお話しでした。それではこれまでと同様ではありませんか。本務欠員をゼロにしていくのはいったいいつになるのでしょうか。本市独自に、欠員をゼロにするための施策も必要なはずです。
本市では、長期にわたって働いている臨時教員が大勢います。私は、長期間にわたって臨時教員が任用され続けるということは、臨時教員の固定化を生み出し、良くないことだと考えます。このことは、今年2月の私の質問で、総務局長からも「フルタイムの臨時的任用を繰り返すことによって、事実上常勤職員と同様の勤務形態を適用させるようなことは避けるべきである」とも答えられていることからも同じ思いだと思います。そして私は、臨時教員が正規教員として働けないとする理由はどこにもないとも思っています。臨時教員であっても子どもたちにとって先生は先生、正規非正規の区別はありません。長期間にわたり本市で働き続けている臨時教員を、今すぐに正規採用する仕組みを作ることによって、本市の正規教員不足を解消する施策になるのではないでしょうか。ぜひ検討していただきたいと思います。
3 臨時的任用講師の同一校での継続任用について
同一校での継続任用不可なのは千葉県と名古屋市だけ
【高橋議員】次に、本市における臨時的任用講師の同一校での任用についてお聞きします。
現在、臨時教員の中でも常勤で働く産育休による臨時的任用講師は、学校が必要と認めた場合に限って、3年を限度に、同一校での任用が認められています。しかし、それ以外のケース、例えば病気で長期間休んだ正規教員の代わりに臨時教員が任用される。その後休んでいた正規教員が復帰して任用期間が終わったものの、その直後、同じ学校で別の正規教員が産休を取るといった場合、その学校で働いていた臨時教員を任用することができません。このことに、学校現場からも、保護者の方からも疑問の声が上がっています。
正規教員の代わりに入る臨時教員は、年度途中であっても、すぐに学校のこと、子どもたちのことを把握することが求められます。しかしそれは、普通にできることではありません。「明日から来てください」と言われるほど切羽詰まった学校、もし、これまで働いてきた臨時教員がそのまま任用されれば、それこそ、即戦力として頑張ってもらうことができるのではありませんか。
他都市はどうなっているでしょうか。私が調べたところ、同じ臨時教員を同一校で続けて任用できないというルールを作っているのは千葉県と名古屋市だけです。他の自治体では、条件さえあれば同じ臨時教員を同一校で任用することができるようになっています。それは、毎年臨時教員を入れ替えるよりも、同じ臨時教員を任用した方が、学校全体の教育力や教員同士の連携を高めていくことにつながると判断されているからです。
同じ学校で、再度臨時教員が必要とされるような条件がある場合については、同じ臨時教員を再度任用することができるようにするべきではありませんか、教育長の見解を求めます。
常勤講師を同一校で継続任用することについてメリット・デメリットを整理したい
【教育長】常勤請師は、本務教員の産休・育休・休職等の要件に応じて任用されています。単年度での任用が原則ですが、同じ補充要件である場合は、指導の継続性の観点から学校の希望に応じて、3年を上限として継続任用を認めております。
近年、本務教員の産休・育休者が増加しており、同一校で複数の常勤講師が在籍する状況も多く、任用が3年未満で切れる常動請師を、補充要件が変わる場合であっても、3年間同一校で継続して任用したいという要望があることは承知しています。
今後、常勤講師を同一校で継続任用する際のメリット・デメリットを整理し、対応について研究してまいりたいと考えています。
デメリットとは何か
【高橋議員】指導の継続性という観点から、常勤講師の同一校継続について研究していきたいとの回答をいただきました。非常に前向きな回答と思います。同じ臨時教員が、同じ学校で継続して任用できるようになるというのは、一歩前進になると思います。
教育長はそのためにも「メリット・デメリットを整理し」て研究していきたいと答えられましたので、その部分を少し明らかにしたいと思います。私は、同一校で働くことは、臨時教員自身が子どものことや地域のことを良くわかっている、だからこそ子どもや保護者への対応にも余裕が生まれてくるでしょうし、また教師同士の連携も取りやすく、授業での幅も広がるなど、メリットが非常に多いと思います。デメリットについては、私は何も思いつかないのですが、例えばどのようなものがあると考えているのですか。教育長、お答えください。
他の講師の雇用機会が失われる(教育長)
【教育長】例えば中学校では、教科によって任用される人数が限られるので、特定の講師が継続的に任用されることによって、他の講師の雇用機会が失われることになると考えております。
条件があれば同じ学校で働き続けられるのは当たり前
【高橋議員】教育長が今あげたデメリット、本当にデメリットとして正しい認識なのでしょうか。実際に講師登録をして仕事を待っている人に聞いてみましたが、長期にわたって任用され続けている人がいるから自分に仕事が来ない、などと考えている人はいませんでした。そして、条件があるならば同じ学校で働き続けられるというのは当たり前だとおしゃっていました。それが普通の感覚です。
要件が異なっても、同一校での継続任用ができるようになれば、多くの学校でも喜びの声が上がることと思います。今後研究をしていくということでしたから、少なくとも3年間は継続任用できるように、制度改善していただくよう強く要望いたします。
加えて、同一校で、本当に長期にわたって臨時教員が必要とされるケースもあります。正規教員が妊娠初期に、体調を崩して長期の休みを取り、そのまま産育休に入るケース。育休中にさらに妊娠して、再度産育休を取るケースなど実際にあるわけです。一定長期にわたる代替が必要とわかっている場合、正規教員を採用して代替とするのが一番良い方法ですが、臨時教員を任用するということであっても、3年という上限を超えて継続できるのかどうかについても、ぜひ検討していただきたいと思います。
(以上)